魔法のぬいぐるみ

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 医者に言われたのは、余命1週間の宣告 私、日向知代は昔から身体が弱く、重い病気を患っていた。小さい頃から病院にいて、いつかは死ぬんだと思って過ごしていた。そして、とうとう急遽、私と両親と共に、先生から言われた私の余命宣告、昔から私の担当を受け持つ、医者の武内先生に言われて、私はようやく、この身体から楽になれるのだと思うと嬉しかった。 でも、私の気持ちとは逆に、両親は酷く悲しんで泣いていた。 「先生!!知代は、・・・知代はもう助からないんですか!?」 「・・・おそらくは。」 「・・・じゃあ、本当に助からないんですね。」 「・・・はい、娘さんとの残り僅かな1日を大切にしてあげて下さい。あと、知代ちゃん、君は残りの1週間、自分がしたかったことを成し遂げて欲しい。」 「したかったこと・・・?」 「何でもいいよ、じっくり考えてごらん。」 武内先生はそう言いながら、微笑んでいた。 私がしたかったこと、それは・・・ 「外に・・・水族館に行ってみたいです。」 「「!?」」 両親が私が言ったことに驚いた後、お母さんが私に言った。 「・・・そうね、明日3人で行きましょうか!」 「そうだな、今日はもう遅いし、知代は部屋で休みなさい。」 「・・・うん。」 ※※※ 私は、病室に戻り、寝ることにした。 夢のなかにはお魚さんがいっぱい海の中で泳いでいる。 『オイ』 私は、その夢を何度も見てしまう。 『おいってば』 ん?何か声がする・・・・・・ 『おい!!オイラの声、聞こえてんだろう!?』 何処にいるの・・・? 『此処だよ、此処!!』 足元を見てみると、首もとにかけられた赤色のリボンを付けた、テディベアがいた。 『よ!』 右手を挙げながらテディベアが話す。 ・・・テディベア!? 「テディベアが喋った・・・!?」 『当然だ、俺は此所の病院の妖精だからな!』 えっへんと偉そうに言う、テディベア。 『日向知代だろ?あと、余命1週間っての。』 「ど、どうしてそれを!?」 『オイラは何でも知ってるからな♪というわけで、1週間、お前が13歳、終末期を終える為にお手伝いをしてやる。オイラの名前はテディベアのテディだ。よろしくな!』 片手を上げて私に握手を求めるその姿は、私を温かい気持ちにしてくれた。 『お前が一生懸命生きた命だ、最後くらい、楽に息抜きしても、良いんじゃないか?』 ・・・友達 この子と、・・・友達に・・・なりたい。 「私と・・・1週間だけ、友達になってくれる?」 『良いともさ!!』 嗚呼、神様此れは奇跡でしょうか?私に、人間でもないお友達が出来ました。とても、温かい人です。 私は、ゆっくりと座り、ぽつりと言った。 「よろしくお願いします・・・。」 『宜しくな!後、オイラの名前テディって呼べよ!オイラも知代って呼ぶから。』 「うん。」 互いに握手を交わした。私は、嬉しくて不意に涙を流してしまった。 ※※※ 「知代、起きて、もうすぐ水族館よ。」 「ん・・・?」 目をゆっくりと開けると、私は、車の中にいた。そういえば、お父さん達と一緒に水族館に行ってたんだっけ・・・。 いつの間にか着いていたみたいだった。 「あら、可愛いテディベアね。」 私の傍にちょこんとテディが座っていた。何か、可愛いな。 「あ、・・・これは病院で借りたの。」 「そう、さぁ行きましょうか。」 「うん!」 テディも一緒に連れて、私達家族は色々な魚を見て回った。鮫や熱帯魚、イルカのショーを見たり、海の中って凄いなって思った。 『オイラ、水族館ての初めてだ。綺麗だな。』 「外に出たことないの?」 『病院の中で過ごしていたからな。たまにはいいだろ。』 「・・・」 『因みに家族の人間や、外野の人間にはオイラの声は聞こえないぞ、安心しろ。特別な人間にしか聞こえないし。』 「凄い能力だね。」 『まあな♪お、でかいなあの魚!!』 そうして、あっという間に時間が過ぎて1日目が終わった。 「楽しかったか知代?」 「うん、お魚さんがいっぱい泳いでて綺麗だったよ。」 「良かったわ、楽しんでくれて、次は何がしたいの?」 「学校に行ってみたい。」 ※※※ 「まさか、あの子があんな事言う何て夢にも思わなかったわ・・・。」 「病院で過ごしていたんだ、友達が欲しいのは仕方ない、1日体験でもなんとかお願いしてみるよ。」 「貴方・・・ありがとう。」 「あの子が1日でも世界を知って欲しい様に、そして、いい思い出になって欲しい。」 [newpage] 「1日体験?」 「校長と話し合って1日体験ならいいよって許可がもらったよ。知代は私服でもいいって。」 「ほ、本当に?ありがとうお父さん。」 そうして、近くの中学校に私は、1日体験で学生になるのだ。 まずは、自己紹介をして、HR をして、一時間目が始まった。国語である。 読み書きや、漢字があって、教科書を読むのは大変だった。隣の席の女の子が色々教えてくれた。 二時間目 数学 私は、皆と合わせられなくて、計算が難しくて、でも、先生に教えてもらった。 因数分解や足し算、引き算をした。 『大丈夫か?知代』 「う、うん。大丈夫・・・。」 計算は私には、合わないみたい。 3時間目道徳 此処では、ある1つをテーマに皆で意見を出し合い、話し合う授業である。 今日のテーマは、温暖化だった。 さっそく、机をくっ付けて話し合いを始めた。 「温暖化防止って中々難しいよな。」 「今から始めるというのが節電くらいだし。」 「日向さんはどう思う?」 「え?む、難しいね。やっぱり、節電が大事かな。ニュースでも話題になってるし。」 「だよな、それしかないわ。」 班の人とこれだけ話せてとても、嬉しかった。 そして、皆で話し合った結果、これからも節電対策をしっかりすることに決まった。 『良く意見言えたな、知代!』 「うん!」 4時間目理科 原子記号や、それを化合して計算したり、実際に実験でやってみた。 一人でやると難しい、初めてのことばかりだ。 『原子記号でこういうの作れるんだな。でも、オイラは知ってるからな!』 「テディって何者?」 『元は魔法使いだぞ。』 「ええ!?」 初耳である。 「日向さん、フラスコ持って来ようか」 「あ、うん。」 何とか、実験通りに進むことが出来た。 『何事もチャレンジだな。』 「うん。」 5時間目体育 体育の授業では、バレーという形ですることになった。 「テディ、私もバレーをしてみたいんだけど、大丈夫かな?」 『知代も、参加したいんだな。よし。』 そうテディが言うと、お月様の形をしたステッキを出して私に向けて、呪文を唱えた。 『知代が、身体が丈夫になります様に!そいや!!』 キラキラした物が私の回りを囲んでそして、消えた。 『体育の時間だけ、身体が持つようになったぞ。病気は治せないけどな。』 「うん、それでも嬉しいよ。ありがとう。」 そして、私も皆と一緒にバレーをしてみた。硬いボールや、軟らかいボールをやってみた。楽しかった。 「私は、余命1週間の宣告を言い渡され、残りの時間を今大切に過ごしています。貴重な時間を与えてくれて、私は、とても、感謝でいっぱいです。今日は本当に、ありがとうございました。」 最後は私のお別れの一言だった、私は、全てを言った。 3日目になった。 私がしたかったこと、次に花火大会に行くこと。 『花火大会はどういう所なんだ?』 「空に、花火が出る所だよ。」 季節は夏、今日は地元の花火大会に行くことになった。 「花火大会よ、知代。そうだ、浴衣を着てみるのはどう?」 「浴衣?いいの?」 「折角行くんだもの、さあ、着替えましょう。」 お母さんに着せてもらったのは桜色のピンクの着物であった。 髪はお団子風にお母さんが整えてくれた。 「お母さん、ありがとう。」 「いいのよ、それより綺麗だわ。お父さんも準備出来たし、行きましょう!」 「うん。」 『おう!』 徒歩で15分歩くと、お客さんがぞろぞろと屋台やらいる。 「凄いな。」 「知代は何か食べたい物がある?」 「かき氷、焼きそば食べたい。」 「食いしん坊だな、知代は。」 「えへへ・・・。」 『知代、花火大会って屋台もしてるんだな!』 「そうだね、私も初めてだから、そうみたい。」 『行ってみようぜ!』 「お母さん達、行こうよ。」 「ええ。」 私達は色々な物を買って、食べて、遊んだ。金魚すくいは中々取れなかった。 お父さんが取ってくれて、嬉しかった。 射的もやってみた。結構楽しかった。 2等の兎のぬいぐるみをゲットした。 最後に花火、沢山の花火が空に浮かんで大きな音を立てて、綺麗に咲く。 『オイラも、ソイヤ!』 テディが空にステッキを振ると、テディにそっくりな顔の花火がピンク色に上がった。可愛いかった。 次に映画舘 両親と一緒にポップコーンを買って、今人気の映画を観た。とても、面白かった。 『あの、主人公かっこよかったな。』 「うん、面白かった。」 次に遊園地 遊園地には、さまざまなアトラクションがいっぱいである。 『やっぱりメリーゴーランドに乗るか?』 「激しい乗り物は嫌だし、メリーゴーランドなら良いよ。」 『よし、行くぞ!』 「うん!」 私とテディはメリーゴーランドを一緒に乗って遊んだ。 「テディ、私達メリーゴーランドを乗ってるよ!」 『中々面白いなこれ!!』 音楽と共にグルグルと回る。 後は、買い物をしたり、食べ物を食べた。 乗り物も何かと乗ってみたけど楽しかった。 次に私とテディベアの過去の話。 「今日は、お父さん達が急なお仕事で来れないから、病院で私達のお話をしようよ。」 『いいぜ♪まずは、知代からだな。』 「私は、思い病気で小さい頃から病院にいるよ、でも、外のことってあまり知らないの。いつも過ごすのは病院の図書館とテレビを観て過ごすの。だから、友達があまりいないの。」 『・・・寂しくなかったのか?』 「寂しいよ、だから、希望とか本当に期待してなかったの。だけど、テディと出会えて最近変わったわ。」 『何か照れるな、アハハ!』 「私の話は終わり、次はテディの番よ。」 『俺は、本当に病院に来る前は魔法使いをやって、魔法学校に通っていたんだ。』 魔法学校テディベア協会、そこには、優秀な、テディベア達が集まる場所である。 『沢山のテディベア達が、魔法の勉強をしている所だ、因みにオイラは優勝な生徒だったのだ!』 「凄いねテディは。」 『オイラを妬む奴らだっていたぞ、オイラはいつも、クラスに浮いていた。優秀過ぎるのも息が詰まることもあった。だけど、そんな時にオイラの事を理解してくれたのは、先生だった・・・。』 [newpage] 『何でオイラがこんな目にあわなきゃならないんだよ。オイラは皆を幸せにしたくて頑張っていたのに・・・。』 『テディ、そんなことはありませんよ。』 『先生!?』 眼鏡をかけたマリー先生だった。 『貴方は、誰よりも勉学に励み、頑張ってきたのですから、誇りを持ちなさい。』 『・・・はい。』 『それと、今日から貴方は、下界に行きなさいのことよ。』 と、言われて足元に暗い穴に落ちたオイラは下界に行き、たどり着いたのが、此処だったというわけだ! 「ねぇ、テディベア協会って一体何人の生徒が、いるの?」 『三万七千人だぞ。』 「凄い多いのね・・・。」 『とにもかくにも、此処に、来てからは、いいことばっかりだ。知代と同じ様に、孤独な子供達に僅かな希望を与えることが出来たんだ。後、魔法のステッキ使うのは、限りがあるんだ。』 「限り?」 『死んだ人間や、病を治せないこと、殺しもできない。』 「・・・・・・」 『というわけで、オイラの話は此処までだぞ。』 テディにも、辛い過去があった事を知った。 次は、お母さんと一緒に料理をした。カレーを作った。 「知代、結構上手いわよ。」 「そう?」 「玉ねぎと、人参は、其処に入れて、うん、そうそう。」 お母さんの教えで、上手く作れる様になった。 『玉ねぎって染みるよな。』 「うん、目が痛い。」 なんやかんやあって、カレーを完成した。 「「頂きます!!」」 「モグモグ、うん、美味しいわ。」 「うん、美味しいよ凄く美味しい!」 「知代と料理して楽しかったわ。」 「私も楽しかった!!」 『良かったな、知代。』 「うん!」 次は旅行に行った。 1泊2日の北海道温泉旅行、テディと両親と一緒に行った。 温泉が外にあって、入ってみると、温かくて気持ちが良かった。 『極楽極楽だな♪』 「うん♪」 外の景色も凄く綺麗だった。 食事も凄く豪華だった。伊勢海老や茶碗蒸しが、美味しかった。 『温泉様の複数を着てみたが、どうだ?』 「凄く似合ってるよ!」 『オイラは何でも似合うからな!知代も似合ってるぞ!』 「ありがとう。」 それから、卓球をしたり過ごした。 後は、疲れて眠ってしまった。 身体が重くて、息が苦しい。 前の疲れが回ったのかな? 「知代!!」 「知代、しっかりしろ!!」 此処は・・・そっか、私、倒れたんだ。 気づいたら1週間てあっという間だったな。 『知代・・・1週間が来てしまったんだ。』 「私ね・・・初めて・・・友達っていいなって本当に思ったの、テディに会えて本当に良かった、一緒に入れて良かったよ。ありがとうテディ。」 『此方こそ、ありがとうだよ。知代。オイラも1週間一緒にいて、色々な場所に行って楽しむこと、多くの事を学ぶ事が出来たよ、ありがとう。』 「私の楽しかった・・・ありがとう。お父さん、お母さん・・・いっぱい迷惑をかけました。私は、お父さん達の娘で・・・良かったよ。幸せでした・・・。」  「「・・・」」 ピーピー 電信音が無機質に病室に響き渡る。 「知代・・・!!」 「ぐす・・知代・・・!!」 そうして、知代は旅立って逝った。 ※※※ 「先生、そのぬいぐるみどうされたんです?」 「ああ、君は新人だから分からないね、この病院にはね、魔法のぬいぐるみが孤独な少年少女達を癒して助けるテディベア何だ。僕も此処に入院してたんだけど、心細い時にいつも傍にいてくれたんだよ。体調が良くなった時、いつの間にか消えているんだ。でも、私が此処の医師になった時、不思議と、机の傍に戻っているんだ。ああ、お仕事が終わったんだなって思ったよ。」 「そうなんですね。」 「愛されてるよ、テディは。」 「あれ?先生いなくなってますよ?」 「いいさ、また何処かに行ってるんだよ。」 今日もテディは大忙し、幸せを運ぶのに大忙し。 end
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