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「ですから、お願いいたします。花園を返してください。返さなくてもいいので一度、社長、いや会長でもいいので会うように説得してください」
面倒だが、話すだけならいいだろう。
「分かりました。今日話してみます。ただし、会うか会わないかは優梨が決めます。決まり次第こちらからご連絡するのでお店にはもう一生来ないでください」
「ありがとうございます。もちろん花園が会ってくれるのならもう来ません。ではご連絡お待ちしております」
人の話をまともに聞いちゃいない。大人たちは好き勝手に言葉までもトリミングする。私もあんな大人になってしまっていないだろうか。
彼女がカフェを出ると陰に潜んでいた優梨が姿を現した。
「かっこいい! 惚れなおした! 葵って強かったんだね」
「……」
優梨が私の手を掴んだ。
「もしかしてずっと震えてた?」
私は小さくうなずいた。
本当は怖かった。ここまで言っていいものなのか、私は何のために優梨をかばっているのか、本当に優梨を信じて突き進んでよいのか。
いや、怖かったとか優梨の為だとか嘘かもしれない。
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