3607人が本棚に入れています
本棚に追加
本当は私の過去を知りもしない誰かに蔑まされたことや、私が価値のない人間だと言われたことに嫌悪感を抱き、怒っていたのかもしれない。
色んな感情が心の中で渦巻いている。
「いいこ、いいこ。頑張ったね」
何も知らずに優梨は隣の席に座り私の頭を撫でてくれる。
「ごめん。余計な事したかも」
「全然。でもあれだけ葵に言わせたんだから、俺もちゃんと向き合わないといけないかもね。……ねえ、葵」
「ん?」
「俺を誰にも渡さないでね? 俺も葵を誰にも渡したくないから」
子犬のようにキッチンから顔を出している優梨を見ていると私が守らなければと思ってしまった。絶対彼女達には優梨を渡さないと思っていた。
でもそれは、単に優梨を守りたいからだろうか。
それとも……。
「優梨、もう利害一致しそうにないよ」
「ん? どういうこと?」
「優梨は早く私のこと捨てて」
「何言ってるの?」
「優梨は家から逃げるために私と結婚したんでしょ? 私を繋ぎとめるために好きな演技していたんでしょ? もうやめにしよう。こんな事、優梨の為にならないし、優梨の家族の為にもならない」
最初のコメントを投稿しよう!