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「才能って何? 絵が入選したから? たったそれだけでしょ? それまで一度も会社に入れなんて言ったこともなかったのに。優醍も俺がいない方が絶対いいでしょ」
「優梨、そんなこと考えてたのか?」
「優醍……」
弟の優醍が大学から帰って来た。相変わらずイケメンの弟だ。そして俺なんかよりずっと大人だ。
そしてすぐに強面の父も帰って来た。
「優梨、優梨か。本物の優梨か?」
「見ても触っても分からないの?」
「ああ~私の優梨だ」
顔に似合わず、父は俺にベタ惚れだ。俺をまるで愛犬のように可愛がる。今もまさに頭を撫でられ頬をスリスリされている。修学旅行などで少し家を離れるといつもこうだ。毎度のことながらウザイ。
「座ってくれる?」
「ああ、そうだな」
父はソファーに腰を下ろした。
「急に出て行ってごめん。でも俺、会社に入るつもりはない」
「何を言っているんだ。父さんはな、優梨に辛い思いさせたくないんだ。我が社なら優梨を温かく迎えてくれる。誰も優梨を叱る人なんていないんだぞ。それに優醍ももう働いているんだから、一緒に働けば楽しいだろ」
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