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優醍は大学生にして父の会社を手伝っている。
「優醍がいるからいいでしょ」
「何度言えば分かるんだ。優醍も優梨がいた方が心強いだろう。それに社員みんな優梨が入社するのを心待ちにしているんだ」
「それは違うよ」
「何が違うんだ。父さんが嘘をつくと思っているのか?」
「父さん、優梨の話を聞こう」
優醍が父を止めてくれた。父は仕事のことになると人が変わる。何度も俺は父と話そうとしたが、これまで父が俺の話を聞いてくれたことはない。
父は仕事仲間を自分の家族のように思っている。だからこそ、俺が誤解していると思っているのだろう。
でもそれは違う。
祖父が築き上げたこの会社は、設立当初、数人規模の小さな会社だった。だから社員は家族のようだった。幼いころから父はその環境で過ごしてきた。社員の息子たちとは遊び仲間で、会社が大きくなるにつれ、遊び仲間は同僚に、そして父を支える存在になった。彼らが推薦する人材は自分で選んだ人材のように信頼する。
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