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それなのに、俺が絵のコンクールに入選したと知るや否や実権を握りたい人達が俺を社長候補として担ぎ上げた。俺の事を知りもしない人が、俺も社長の器を持っていると言い始めたのだ。きっと優醍よりも俺の方が都合がいいのだろう。
間もなくして俺の周りに若者が増え、どこに行っても付きまとう彼らに嫌気がさした。
会社が大きくなったからこそ社長の席も増えている。俺に取り入ればどこかの社長になれるのではないかと思っている人も少なからずいるだろう。俺自身に期待して近づいてくる人なんて一人もいない。
「優醍ありがとう。父さんごめん。父さんが俺の事を思ってくれているのは分かる。でもね、カフェでバイトするのは凄く楽しい。勉強にもなる。大変だけど、できることが一つ一つ増えていくのが凄く嬉しい。失敗もするし、理不尽な客もいるし、嫌な思いすることだってあるけど、でもそれを知っているのと知らないとでは全然違うと思うんだ。きっと父さんの会社に入ったらこんな事、味わえないんだと思う。だから俺は会社に入るつもりはない」
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