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これまで何度も父と話そうとして分かったこと、それは父に社員の事を話しても聞く耳を持たれないという事。それなら遠回しでも、俺が会社に入らなくていいように話を持って行かなければならない。
「優梨……優梨は大人になったんだな。つい最近まで学生で、好きな事しかしてこなかった優梨が、ちょっと怒ると拗ねて部屋から出てこなかった優梨が……」
父さんは感慨深そうに言った。そして沈黙を破るように優醍が話し始めた。
「この会社でもそんなことは味わえる。本当は俺の事、気遣っているんだろ? だから家を出て行ったんだろ?」
「それは優醍の考えすぎだよ。みんな忙しそうだし、いつまでもみんなにおんぶに抱っこじゃさすがに俺も心苦しいからさ。でもここにいたら好き勝手出来ないし、優醍がいれば安泰だと思ったから」
「優梨……」
優醍も派閥ができていることに気が付いているだろう。でも敢えて言わないのは父を気遣っているからだ。信じている社員が実権を握るために俺を利用しようとしているなんて父さんは信じたくもないだろう。
「ほらほら、話は終わり。たまに遊びに来るからさ、俺はこのままの生活を続けるね」
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