Ep.7 

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Ep.7 

「ってことで、明日実家に一緒に行ってくれないかな?」  久しぶりに帰って来た優梨が申し訳なさそうにそう言った。私を巻き込まないようにここ数日泊まり込みで家族を説得していたらしいが、(らち)が明かなかったそうだ。  まあ、私も気になっていた事だ。両親への挨拶なしで結婚なんて駆け落ちと思われても仕方がない。どんな形の入籍にしろ、このまま生活を続けていいものではない。 「分かった。行くよ。でも仕事があるから仕事が終わった後にしか行けないよ」 「本当にごめんね」  優梨は本当に私や私の家族を守ってくれるのだろうか。 「あっ今、俺の事頼りないと思ったでしょ」 「何も言ってないじゃん」 「顔が言ってる。俺、ちゃんと葵の素晴らしさを熱弁したんだよ。でも、昔の事知らないし、その事言われたら、推測でしか話できなくて、納得してもらえなくて……」  私が隠しているせいで優梨は困っていたんだ。 「うん。分かった。分かったから、今日はもう休もう」 「今日は一緒に寝てくれる?」  子犬め! 両手をスリスリこすり合わせながら大きな目で私を見やがって。可愛いじゃないか。 「添い寝だけだよ」 「やった!」  久しぶりの優梨の香りがなんだか落ち着いた。  こんな時間は奇跡でしかなかったのだと思い知らされる。
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