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母屋のお手伝いさんに案内されて応接間に通された。スーツ姿の強面のお父さん、綺麗なワンピースを着ている優梨に似たお母さん、七三分けの銀縁眼鏡をかけたお父さんとお母さんを掛けて2で割ったような優梨のお兄さんのような男の子がソファーに座っていた。
「し、失礼いたします」
「どうぞ、お座りください」
お兄さんと思われる人が私にそう言った。唾をのみ込む音さえ響きそうな静けさの中、私はソファーに腰かけた。
「紹介します。この方が俺の妻、沢木葵さんです」
優梨はかしこまりながらそう言った。
「は、初めまして、沢木葵です。この度はご挨拶が遅くなってしまい申し訳ございません。あの、こちらのお菓子がお好きだと伺いましたので、よろしければ」
「ありがとうございます」
またしてもお兄さんと思われる人が銀縁眼鏡をキラリと輝かせながら言った。お母さんは私を受け入れないと言わんばかりにそっぽを向いている。
「沢木さん、単刀直入に申します。優梨と別れてください」
「何言ってんの、父さん」
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