Ep.7 

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「すみません。籍を入れられている以上は致し方ないでしょう」  弟さんはそう言って頭を下げて席を立った。お母さんは慌てるように二人を追った。  優梨は無理に笑顔を見せながらせっかくだしと私を彼の部屋まで案内した。優梨の部屋は私の部屋のリビング以上の広さがあった。沢山の絵が置かれ、机と大きなベッドが置かれていた。 「初めて見るけど上手だね。凄く綺麗」 「ありがとう。趣味だけどね」 「美大じゃないの?」 「うん。一応経済学部」 「経済学部?」 「疑ってんの?」 「別に……」 「ほら」  優梨は机の引き出しから卒業証書を出してきた。確かに経済学部卒業になっている。 「信じた?」 「うん。優梨には色々な可能性があるんだね。お父さんたちも期待しちゃうのは仕方ないのかも」 「期待なんてしてないよ。ただ手が届く所に置いておきたいだけだよ」 「期待してないとあんな条件出してこないよ」 「そうかな……」  私は他の絵も見せてもらうことにした。優梨の絵のタッチは繊細で、色合いは優しくて明るい。本当に優梨のような絵だ。 「あのさ、あんなことまで喋らせちゃってごめんね」  優梨が後ろから声をかけてきた。応接間でのことだろう。 「ううん。言えてすっきりした」
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