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Ep.8
優梨の家からはタクシーを使って一人で帰った。優梨はタクシーが見えなくなるまでずっと手を振ってくれていた。
優梨が週1回のシフトになったことで私の忙しい日々が始まった。大学が夏休みに入ったので上手く穴埋めはできたのだが、今後の事を考えるとやはりもう一人はバイトが欲しい。優梨が戻ってくるかもしれないが3ヶ月も優梨がいない穴を埋めるのは無理だ。
私は優梨にも説明し、バイトの募集を始めた。だが、そう簡単にここの合格基準に達する人材が来るはずがない。しかも本社からはバランスを考え男性を入れよとの命令だ。
おそらく優梨の人気で女性客がついていることに味を占めているのだろう。現場のことを知らずに本部であれこれ指示なんて本当に困ったことだがこれが社会というものなのだろう。
「おはよう」
週1回のシフトになって初めての出勤日、優梨は私よりも早くカフェに来ていた。シェフも来ていないようで、ドアの前に笑顔で立っていた。
「おはよう。早いね」
「だって、ようやく葵と会えるんだよ。そりゃ朝から居ても立っても居られないっしょ」
なんだこの無償の愛。凄く嬉しい。
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