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それから慌ただしい日々が過ぎていった。
そして私はシェフが運転するワゴン車の助手席に座り、海に来た。優梨は許しを得たらしいが、どんな風に言って許しを得て来ているのかは分からない。私もいると知っているのだろうか。
「みなさん、着きましたよ」
シェフの言葉を聞いてか聞かずか、車が止まると同時に後ろに座っていた真子が飛び出した。真子に続き、優梨、キッチンの女子、そしてキッチンの男子2名が勢いよく外に出た。
「海~!」
若い彼女達は楽しいだろう。海なんてこの年で来たら紫外線でシミにならないか、シワにならないかと気になってしまう。真子が車から男性陣を下ろし、女子だけで後ろの座席に隠れながら着替えていた。
「葵は着替えないの?」
「何度も言ったでしょ。私は水着なんて持ってないし、着ないよ」
私は優梨の質問に答えた。
「ジャ~ン。というわけで買ってきました」
優梨が水着を袋から取り出そうとするので必死に止めた。いくら親戚として通っている私でも優梨が私に水着を渡すなんてのは恥ずかしい。運よくみんなには聞こえていないらしく、私は優梨が手に持っている袋を鷲掴みして下ろし終えた荷物を運んでいるシェフの手伝いに向かった。
「荷物持ちます」
「ありがとうございます」
私はシェフから渡された軽い荷物を持ってビーチに行き、バーベキューができるエリアに移動した。
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