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「そう? 年齢近いだけじゃない?」
優梨がそう言った。まさにその通りと返事をしたい。
「そんなことないよ。ねぇねぇ……」
私は気になり食材を取るふりをして後ろを振り返ると真子が優梨に密着して耳元で話していた。
胸が腕に当たっているではないか。さっさと離れなさいと心の中の私が叫んでいる。
でも現実の私は、何も気にしていないふりをして後ろの子たちに声をかけ、食べる準備をしてもらうように言った。
「どれから焼きますか?」
「そうですね――」
シェフの声は右から左に流れる。体はシェフが言っていることを聞いて動いているが私の脳内では優梨と真子の光景が何度も何度も再生される。
「……葵、葵ってば」
ふと横を見ると優梨が立っていた。
「ごめん。どうした?」
「俺やる」
「あ、うん。ありがとう」
優梨にトングを渡し、ノンアルコールビールを貰ってみんなと乾杯した。
アルコールが入っていればお酒の勢いで水着を着て優梨に褒めてもらえるかもしれないのに、そんな都合よくお酒を使えないのが私だ。
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