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暫くするとシェフが遠くを見ながら話し始めた。
「優梨君、かっこいいですよね」
腕を上げ、視界を広げると優梨がこっちに向かってくる姿が見えた。後ろから真子が小走りでついてきている。
「そうですね。真子も綺麗です」
「2人とも世界が違う芸能人みたいで僕なんか一緒にいるのも拒まれます」
「何となく分かります」
私は笑顔でそう答えた。優梨は本当に世界が違う人だ。一緒にいると忘れてしまうが、こうやって離れてみると私の夫ということがありえないことだと分かる。私が真子ならそんなこと思っても強気に乗り越えられるのだろうか。
優梨は無言で私の手を取って、二人に「ついてこないで」と言って歩き出した。
「え? ちょっと、待って、コケる」
真子もシェフも目が点になって何も言えずに立ちすくんでいる。
「ねえ、優梨どうしたの? ねえってば」
誰もいない場所に移動すると優梨は私を睨みつけてきた。
「大輝さんに見せるためにそれ買ったんじゃない」
私が着ている水着のことを言っているのだろう。
「でも、みんないるから」
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