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私はみんなの元には戻らずに車の方の海辺で一人遊んでいた。
「探しましたよ」
私を探しに来てくれたのはシェフだった。
「すみません。みんなもう帰るんですか?」
「いいえ。また海に入りに行きました。沢木さんが戻って来ないので心配になって」
「すみません。私がいると海堪能できないかと思って」
「僕は沢木さんといられれば砂浜でもどこでもいいですよ」
何だろう。今日のシェフはいつもと違って距離を詰めてこようとする。余った者同士がくっつくあれだろうか。いや、仕方なく私の相手をしてくれているのだ。変な妄想をしてはいけない。
「男の人って素直な女性が好きですよね。私、素直じゃないんです。自分が嫌になるほど」
私はシェフに好きになってもらえるような人じゃない。
「そうなんですか? じゃあ僕は素直じゃない女性が好きなのかもしれません」
「野風さんは本当に優しいですね」
「優しすぎてつまらないとフラれました」
元カノとの話だろう。
「贅沢ですね」
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