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「そうですか? 優梨君を見ているとなんだか分かるんです。優しくて、でもちょっと意地悪で、強引で、きっとああいう男性を女性は求めているんだって」
そうなのだろうか。でも、そうなのかもしれない。優梨がただ優しいだけだったら、私はこんなに彼の家庭の事情に流されてなんかいない。
「真子ちゃんが優梨君の事好きだと分かっているからでしょうね。優梨君は真子ちゃんに期待させながら突き放して。きっと二人は付き合うことになるんでしょうね」
「え?」
「なんか腕組んで仲良く海の中に入って行きましたし、それもあって、僕は退散してきたんです」
「そうなんですか」
腕を組んで、二人で海の中? もうこれは浮気じゃないか。いや、浮気とは言えないかもしれない。でも……
「ちょっと泳いできます」
「え?」
私は無性に泳ぎたくなった。目から出てきているのは塩水だ。涙じゃない。海の水だ。激しい心臓の音は一生懸命に泳いでいるからだ。何もおかしくない。何もおかしくなんかない。
勢いよく泳いだせいか、甘く結んでいたパレオはいつの間にか無くなっていた。優梨がくれたものだったのに。
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