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優梨は来て早々そんな風に言って着替えに行った。どうしてもほころんでしまう顔は優梨が戻ってくる前に何とかしなくては。
そんな風に始まった優梨と一緒のバイトの日、あと1時間で閉店だという時に招かれざる客が訪れた。
「葵さん、お客さん」
「私に?」
控室で仕事をしていると女性のホールスタッフが私を呼びに来た。誰だろうと思ってホールに出ると目に入れたくもない人物が私に向かって微笑みかけた。
脚が重くて動かない。なんで彼がここに居るのだろうか。なんで今更、このタイミングで私の前に姿を現したのだろうか。
「葵さん、どうかしましたか?」
「ごめんなさい。誰だったかなと思い出していて、思い出したので大丈夫です」
私は重い足を一歩一歩引きずるように彼のもとに向かった。
「葵、久しぶり。元気そうで何よりだ」
何が何よりだ、だ。
「すみませんが、お客様でないようでしたら、お引き取りください」
「失礼だな。ちゃんとドリンク買ったよ。ほら」
彼の手元にはテイクアウト用の飲み物があった。
「さようですか。お持ち帰り用のようですのでどうぞ外でお飲みください」
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