3606人が本棚に入れています
本棚に追加
/309ページ
これはどうしたものか。
でも、もしかしたら優梨と歩いていれば声をかけてこないかもしれない。私は着替えを済ませた。
「おしゃれしてる」
「だって優梨がおしゃれしてって言ったんじゃん」
「うん。嬉しい」
優梨の笑顔が私を嬉しくさせる。あの人がもういませんようにと心の中で祈りながら外に出て私はなるべく優梨にくっついて歩いた。
「葵、待って、待ってくれよ。オイ」
店を出て数十メートル歩くと彼が私に声をかけてきた。隣にいる美形が目に入らぬかと言いたいが、手を繋いでいる訳でも楽しく会話をしているわけでもないので赤の他人と思われて当然だ。
彼は私の肩を掴んできた。
「ちょっと話をしよう」
「話すことなんてありません」
「そんなことは言わずにさ」
優梨が彼の手首を掴み、静かに声を発した。
「手、離していただけませんか?」
「なんですか? あ~カフェの。バイトの子」
バカにしたような乱暴な言い方だった。こんな人だっただろうか。
「あの、俺たち時間ないんで」
「君は帰って。俺は葵に用があるんだ」
「葵はこの人と話したいの?」
優梨の問いかけに私は首を横に振った。
最初のコメントを投稿しよう!