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「なあ、葵、機嫌なおして。俺反省してるから」
機嫌ってなに? 反省って何? と思いながらもこの男と話すだけ時間の無駄だと思った。
私は優梨の腕を掴み無言で歩き始めた。
「離婚するから。夫婦仲も上手くいってないし」
離婚して会いに来たのではなく、離婚するから。
鼻で笑ってしまう。
離婚するとか、夫婦仲が悪いとか言う男はまず離婚しない。
「もしかしてこの人が元彼?」
優梨が呆れた顔で私に尋ねた。私は小さく頷いた。
「元彼って、俺たちはまだ愛し合ってるよな? ちょっと事情があって会えなかっただけで俺の事まだ好きだろ。だから連絡も無視して、会社も辞めたんだろ?」
私がまだ彼のことが好きだから、忘れられないから、会社を辞めたと思い込んでいたのか。
脳内お花畑か!
「顔も見たくないくらい嫌いですが」
「それは好きの裏返しだろ。分かってんだから」
何が分かってるんだ。分かっていたらここに来ないだろう。
「ごめん、優梨、ちょっとだけ時間くれる?」
「うん」
優梨の承諾を得て、私達は人気のない場所に移動した。
「なんでその男も一緒なんだよ」
「自分の心に聞いてください」
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