Ep.9

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「なあ、葵、機嫌なおして。俺反省してるから」  機嫌ってなに? 反省って何? と思いながらもこの男と話すだけ時間の無駄だと思った。  私は優梨の腕を掴み無言で歩き始めた。 「離婚するから。夫婦仲も上手くいってないし」  離婚して会いに来たのではなく、離婚するから。  鼻で笑ってしまう。  離婚するとか、夫婦仲が悪いとか言う男はまず離婚しない。 「もしかしてこの人が元彼?」  優梨が呆れた顔で私に尋ねた。私は小さく頷いた。 「元彼って、俺たちはまだ愛し合ってるよな? ちょっと事情があって会えなかっただけで俺の事まだ好きだろ。だから連絡も無視して、会社も辞めたんだろ?」  私がまだ彼のことが好きだから、忘れられないから、会社を辞めたと思い込んでいたのか。  脳内お花畑か! 「顔も見たくないくらい嫌いですが」 「それは好きの裏返しだろ。分かってんだから」  何が分かってるんだ。分かっていたらここに来ないだろう。 「ごめん、優梨、ちょっとだけ時間くれる?」 「うん」  優梨の承諾を得て、私達は人気のない場所に移動した。 「なんでその男も一緒なんだよ」 「自分の心に聞いてください」
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