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シャンパンと前菜のカルパッチョが運ばれてきた時、優梨がその重い口を開いた。
「今日葵を一人で帰したくない」
「え?」
「あいつがまた葵の所に来るかもと思ったら不安でしかたない」
「大丈夫だよ。ほら、GPSつけられてるでしょ? 来たら奥さんに怒られるし、彼は奥さんと絶対別れる気ないからそんな危険は冒さないよ。彼の出世は奥さんの後ろ盾があってこそだから。きっと私がバイトで困ってると思ったから、援助するって言ったら内緒で関係持てると思って軽い気持ちで来たんじゃないかな」
「最低な男」
「うん。私もそう思う。今更ながら、なんであんな人好きだったんだろうって思うよ」
「ねえ、俺、あいつぶっ潰したい」
可愛い顔してぶっ潰すなんて言葉。今日の優梨はなんだか違う。
「喧嘩はダメだよ」
「喧嘩はしないよ。俺弱いし」
確かに強そうには思えない。不良に絡まれても私が守ってしまうくらいの見た目だ。でも、今日の優梨はとっても強くかっこよかった。
最後のデザートが運ばれてきた時には優梨とのお別れの時間も近づいていた。
「コース失敗した」
「なんで? 凄く美味しかったよ」
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