Ep.10

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「ほら、同じこと思ってる。俺たちの心は一緒。ねえ、空見える?」 「見えない」 「ずぼら女子。立って、カーテン明けて」  私は優梨に言われるがまま、ビールを片手にソファーから立ち上がり、カーテンを腕で押し除け窓を開けて空を見た。 「見えたよ」 「今俺らは同じ空を見てる。あの星たちから見たら俺らは隣で一緒に見ているようなもんでしょ」 「よく分かんない」 「普通好きな相手がこんな事言ったら意味分からなくても可愛く、そうだねって可愛い声で言う所だよ」 「可愛くなくてすみませんでした」 「もう、だから可愛くないんだって。でも、そんな葵だから俺は葵を選んだんだと思う」 「可愛くないから選んだの?」 「そうは言ってないでしょ。葵は葵で可愛いよ」  褒められているのかけなされているのか分からない。それでも優梨が私を選んだという事については嬉しいと心から思う。今日は勇気を出して電話して良かった。  不思議とそれから毎日たったの10分程度だが電話をすることになった。数時間おきのメッセージよりも嬉しいこの時間のお陰で、やっと私達が気持ちを通わせ始めていると思えてきた。
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