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「見惚れてた?」
優梨は私の耳元でそう囁いた。
「そんなに顔赤くしたら葵が俺の事好きだってことみんなにバレちゃうよ」
「なってないし」
そう言いながら私は手を頬に当てた。顔が火照っているのは手を当てなくても良く分かっている。
仕事に戻り暫くするとキッチンに行くたびにみんながニヤニヤしているのに気が付いた。もしかして優梨とのことがバレたのだろうか。
「ちょっと優梨、なんかキッチンスタッフがおかしい。私達の事バレたのかな?」
「ん? そう? 聞いてこようか?」
「いやいや、聞いたらまずいでしょ。なんか変なことあったら言ってね」
「分かった」
ピークも過ぎ、ひと段落して、みんなの休憩が終わり、私の番が回ってきたが、私の前に休憩に入っていた優梨が顔を引きつらせて戻ってきた。
「葵、今日はお説教ね」
「え? 説教って何?」
「仕事終わるまでに何が悪かったか考えておくこと」
優梨はそのまま仕事に戻り、私は悶々しながら閉店までの時間を過ごした。
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