Ep.11

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「そう言うと思いましたよ。でも、私としては理由が何であれ、優梨が会社に興味を持ち、真剣に取り組むのを止めたくないんですよ。好きなことだけをして生きていくには限界があります。それにこのままでは好きな事が嫌いになったとき優梨はまた逃げるでしょう。ですから、このまま見守ってやってくれないでしょうか。その代わりに離婚についてはもう少し様子を見ることにします」  お父さんの言っていることは分からなくもない。生きていくために、大切な誰かの為に嫌な仕事をしなければならないこともある。大好きだった仕事も嫌な一面が見えて嫌になってしまう事だってある。  でも優梨にとって働く会社は本当にあの会社でいいのだろうか。 「どうしたの? ようやく一緒に住めるのに」  優梨が荷物をまとめて私とお父さんがいた部屋に来た。既にお父さんは部屋を出ていたが、私の頭の中はまだ整理がついていない。きっと私の表情に困り果てて優梨は聞いてきたのだろう。 「優梨、本当にバイト辞めるの?」 「うん。次の人見つけるのも大変だよね。ごめん」 「それは問題ないけど」  週一回しか入っていないのだからシフト調整で何とかできる。でも私が心配しているのはそんなことじゃない。
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