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「なに? 葵が働いていた会社で俺が働くのが羨ましいの? 一緒に働く? オフィスラブってやつ?」
「何言ってんの。……ねえ、なんであの会社なの?」
「どうせ働くなら葵が働いた経験がある会社の方がいいかなって。ほら、困ったら葵に助けてもらえるでしょ? ゴースト営業マン葵。なんちゃって。あはは」
本当のことを言うわけがないと思っていたが、やはり本音は言ってくれそうにない。優梨はこうやってこれまで生きてきたんだ。大切な人を守り、気を遣わせないために。
「これからは俺が葵を養うね」
「ねえ、優梨」
「なに?」
「離婚してくれない?」
優梨が私なんかの為に人生を棒に振る必要はない。お父さんにはああ言われたけど、やっぱり私は優梨に、優梨のままでいて欲しい。優梨が傷ついたり辛い思いをしたりするのは優梨の将来の為であって欲しい。
「私、シェフのこと好きになったみたい」
「葵?」
動揺する優梨を振り切って私は走って優梨の家を出た。
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