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優梨はベッドの上に腰かけて、私の頭を撫でながら話した。
「父さんからなんか言われた? 俺が葵の会社に入社するのは嫌?」
私は返事もせずただただ平家物語の冒頭を小さな声で繰り返していた。
「それ何か聞いたことある気がしてきた。洗脳?」
「違うよ。平家物語。学校で習ったでしょ」
「やっと会話してくれた。ねえ、なんでずっと平家なんちゃらをつぶやいてたの?」
物語くらい言いなさいよと思うが、ツッコむ気力もない。
「気持ちが落ち着くから」
「ふうん。落ち着いた?」
「優梨がいるから落ち着かない」
「それじゃあ、体動かして落ち着かせるしかないね」
優梨は私をベッドの上で押し倒した。
「え、あ、ちょ、ちょっと」
「……とまあ、今までの俺だったら強引にしただろうけど俺も大人になったんで」
優梨はそう言うと私の横に寝転び、私を抱きしめ私の頭を撫でた。
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