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優梨が勉強に励んだのは私の為だけではなかったんだ。人の話を鵜呑みにして本人の話を聞かないなんて私が一番してはいけない事だったのに。
「優梨は本当にあの会社に入りたいの? ギャフンと言わせるなら他の方法があるんじゃないかな?」
「他の方法?」
「今すぐには思いつかないけど、優梨の大切な時間を私の過去の為に使わないで欲しい」
「俺の時間なんてそんな大層なものじゃないよ」
「優梨はまだ分からないだろうけど、大層なものなの。あの会社に本当に入りたい?」
「それは別に……」
「じゃあ今すぐ白紙撤回して」
すぐにお父さんへ電話をさせた。電話口から聞こえてくる「離婚しろ」の声に優梨は抵抗していた。
そりゃそうだ。せっかく長男坊が会社の一部を継ぐ気になったのにそれを止めたのだから離婚と言われても仕方ない。私はそれも覚悟の上だ。
「約束は守ったし、入社はまだ先だし、無理やり入ろうとしたんだし、問題ないでしょ。なんで……それは分かるけど……」
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