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「葵、ネクタイお願い」
「自分でできるでしょ」
「ヤダ」
優梨は必ず玄関先で私にネクタイを結ばせる。そして結んだあとは行ってきますのキスをする。
スーツを着た優梨はかっこいい。本当にもう私は優梨の沼から這いあがれそうにない。
優梨が入社して1週間が経つ。花園家の長男というのは伏せられているが、沢木優梨はとある企業の関係者であると伝えられ、特別待遇で迎えられているらしい。優梨は嫌がったが溺愛父がそこは譲らなかったようだ。
今の所、会社では大きな問題は起きておらず、私達の結婚生活は様子見とされている。
ちなみに、母とは半年以上も連絡を取っていないが、優梨にはたまに連絡が来ているようだ。娘より血の繋がらない可愛い男子に連絡するところが母らしい。
私の仕事にも変化があった。店長職を外れることになったのだ。シェフのお陰でカフェの顔となるスイーツができ、客も安定してきた。
新たな店長は真子だ。真子は驚いてはいたが、本社から私がバックアップするという事もあり、快く引き受けてくれた。契約社員としての採用になってしまったが、真子であれば正社員として採用される可能性も低くはない。
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