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「いいえ、僕は沢木さんと行きたくて……その、好きなんです」
私がピックアップするお店が好きなのだろうか。
「お店なら、私がピックアップして」
「そうじゃなくて、僕は沢木さんの事が好きです。僕なんかに好かれたら迷惑かもしれませんが、今日言わないと多分ずっと言えないだろうなと思いまして。返事はなくても結構です。ではお疲れ様です」
シェフは私が口を開くより先に帰ってしまった。あんなに早口なシェフは初めてだった。
シェフの気持ちは気付かないようにしていた。気が付かなければ余計な反応をしなくて済むから。
シェフの気持ちは嬉しい。でも、シェフの気持ちには応えられない。今の私と優梨は本当の夫婦になりつつある。
朝晩のキス、話し合いで決めた月2回の営み、お互いを尊重し合い、得意な事や不得意な事をカバーし合った家事。
私の心も既に優梨への気持ちが膨れ上がるのを止められないでいる。
そういえば、シェフからは好きって言われたけど優梨からは直接好きと言われたことがない。
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