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「あのね、今度俺の誕生日、仕事休める? 温泉行かない?」
「誕生日?」
「やっぱ忘れてる。俺への愛情少なくない?」
そんなことは無い。愛情は膨れ上がっている一方で止めたくても止められない。でも、そんなこと恥ずかしくて言えない。
「誕生日、そうだったね。でも、優梨は休めるの? 会社入ったばかりでしょ?」
「特別休暇貰った」
さすが特別待遇。
「分かった。確認してみる」
「もう予約もしてるから葵には休んでもらわなきゃ。葵が休まなかったら他の子と行くかも」
なんでそんなこと言うのだろうか。冗談でも言って欲しくない。
「行けば」
「そこは行かないでって言う所。何度言ったら分かる?」
「優梨が行きたい人と行けばいいよ。優梨の誕生日だし」
なぜか反発してしまう。行って欲しくないのに、言葉と心が嚙み合わない。
「あんま可愛くないと本当に浮気するよ。今日だって食事行きましょうって誘われたんだよ」
「行けばいいじゃん。私達の結婚なんて親にさえ認められてない、いつ離婚するかも分からないんだから」
それに結婚指輪だって、好きという言葉だってない。シェフですら言ってくれたのに。
「なんか今日いつも以上に頑固」
「いつも通りでしょ」
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