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きっとシェフから言われた言葉が尾を引いている。たった一言私のことを「好き」と優梨が言ってくれたら済む話なのに、優梨ははっきりと私のことを好きだとは言わない。
「本当に別の人と行ってもいいの？」
「だからいいって」
「じゃあなんでそんなに怒ってるの？ 顔は行って欲しくないって言ってるよ」
分かってるなら行かなきゃいいのに、何でそんな風に聞いてくるのだろうか。そして私はなんでこうも頑なに素直になれないのだろうか。
今までの彼氏とはこんな風に感情的に話しをしたことがなかった。仕事の付き合いで女の子の店に行くと言われても笑って大変だねと言い、付き合いで合コンに行くと言われても分かったと笑顔で言い、言い争いにすらならなかった。
「休まなくていいなら休まないから」
「分かった。別の人と行く」
優梨が戻ってきて初めて喧嘩という喧嘩になってしまった。いつも優梨が折れるか飲まされて私が本音を言う。それなのに今日の優梨は食器も洗わず部屋にこもった。私は仕方なく優梨の食器も洗った。
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