Ep.11

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 次の日から優梨は冷たかった。ネクタイも自分で結ぶし、キスもなし。ご飯は用意するが無言で食べる。  そういえば優梨は気に入らないことがあると拗ねるんだっけ。これが本当の優梨なんだ。今までは少し余所行きだったのかもしれない。私はそんな優梨に甘えていた。  私はこっそり優梨の誕生日に休みを入れ、仲直りの機会を探った。だが、いざ話そうとすると優梨はもう他の女性と約束しているかもしれない、私に愛想を尽かせているかもしれないという考えが浮かび結局当日まで言えずじまいだった。  朝起きると既に優梨は家を出ていた。夜遅くまでどうしようと寝れずに明け方になってようやく寝ついたため、優梨が出たのに気が付かなかったのだ。  家中ピカピカにしても気が済まず、翌日も休みを取っていたのでやる事がなく昼過ぎからカフェに入り浸った。 「葵ちゃん、今日暇だからいいけど、いつまでいるつもり? なんかあった?」 「せっかく休んだからお客さん目線で過ごそうかなと。邪魔だったら帰るよ」 「別にいいけど、本当仕事人間だね」 「暇なだけだよ」  私は再び手に持っていた本に視線を移した。今日はシェフも休みだったので安心して長居をしている。
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