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「もしかして葵大輝さんの気持ち気付いてたの? 鈍感だと思ってたけど、本当は全部計算?」
「違うよ。最近まで知らなくて」
「最近まで?」
ああ、今何を言っても墓穴を掘るだけだ。優梨との距離は縮まらない。せっかく家には誕生日プレゼントを用意していたのにこのままでは渡すこともできない。
「本当に葵って何も言わないんだね。なんか俺、疲れてきた」
「ごめん」
優梨の優しさに甘えてごめん、素直にならなくてごめん、可愛くなくてごめん、沢山のごめんが溢れてくる。苦しい、辛い。だから恋は嫌い。
「今日休み取ったのは俺への当てつけ?」
「違う。昨日も休んだ。もしかしたら一緒にいられるかもしれないと思って。でも怖くて聞けなかった。私は臆病だし、可愛くないし、言葉足らずだし、優梨の奥さんになれるような人じゃない。そもそも家柄も全然違うし、うち母子家庭だし、あんな親だし、絶対いつか離婚させられるよ」
「母子家庭がどうしたの? 葵のお母さんはいい人じゃん。フレンドリーで、甘え上手で、なんでも話してくれて」
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