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「優梨の荷物は私がまとめて離婚届と一緒に送るから。必要なものはそのバックにあるでしょ。今日からはその子の家に泊まったらいいよ。私のせいで変なところに就職させてごめんね。優梨のお父さんには私から謝っておくからもう無理に働く必要ないよ」
「葵ってバカなの?」
「勉強はできる方だったけど、本当こういうことに関しては全然ダメ。だから恋はしないって決めたの。恋しなくて良かった」
「してるでしょ。恋。俺に」
「何言ってんの? 仕方なく優梨に合わせてただけだよ」
「分かった。もういい」
優梨は私を置いて歩き出した。これで本当に終わりだ。自分はなんて面倒臭い女なのだろうか。
やっぱりあの時別れてればよかった。でもいい。これで別れられる。やっと私のペースで生きていける。今度こそ恋せず男に近寄らず、私の為に生きる日々を送るのだ。
そうだ、そう思ったら気が楽になってきた。ほら、もう優梨に会わなくて済む。あの屈託ない笑顔に心が揺れなくて済む。美味しい料理のせいで太らなくて済む。バカになりそうなほど溺れなくて済む。
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