3607人が本棚に入れています
本棚に追加
/309ページ
なんでだろう。気持ちは楽になるはずなのに、体が重くて動かない。足元が歪んで何かがこぼれ落ちている。
私、泣けるじゃん。
こんなに人がいる場所で私、泣いてる。
私は空を見上げて笑いながら泣いた。通行人は不思議そうに見ている。でももうどうでもいい。思いっきり泣こう。涙が枯れる頃に優梨を吹っ切ることができればこんな恥ずかしさなんて屁でもない。
目をつぶって思いのままに涙を流していると誰かに包み込まれるように抱きしめられた。
「素直じゃないね」
ダメだ。そんなことされたらもっともっと好きになる。好きになりたくないのに好きになる。
なんで優梨はいつもそうなの? 完璧すぎるよ。
「俺がいなくなって泣くんじゃなくて俺がいる時に泣きなよ」
私は優梨の胸に顔を埋めた。
「普通の男なら捨てるって思ってるでしょ? 俺普通じゃないから。多分俺、葵専用に生まれたんだと思う」
「そんなわけないでしょ」
「じゃあ、一生かけて確かめてみて」
バカじゃないのかこの男は。こんな面倒臭い女に、しかも10も年上の女に、すっぴん残念女に、可愛くない女に、こんな風に恋させて
「もしかしてロマンス詐欺?」
最初のコメントを投稿しよう!