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家を出てデジタルで絵を描くようになったという優梨が欲しいと言っていた最新機種だ。食費も優梨のお陰で節約できたし、このくらいならと思って買える値段だったのでこの日の為に用意していた。
優梨は私に飛びつくように抱きしめてきた。本当に欲しかったのだろう。意外と倹約家な優梨は買い渋っていたのだ。私は体がちぎれるかと思うほどに左右に揺さぶられ、体中で優梨の喜びを感じた。
「イチャつくのは部屋でやってよね」
母が後ろ向きのまま頭の上で手を振りながら言った。優梨はプレゼントしたものを持って母の隣に座り、ヒソヒソ話しながら何かをしていた。
ソファーは二人しか座れないので私はしかたなく一人でダイニングテーブルの所に座りながら夕ご飯を頼もうと宅配サービスを見ていた。
「お寿司にでもする?」
「いいわね~葵のおごりで特上3つ」
母は図々しい。まあ、仕送りは不要だとお金を受け取らないからこれくらいは問題ない。母は今でも現役で働いている。男と節操のなささえなければ尊敬できる母だ。
お寿司が届く頃には優梨のお絵かきも終わったようだ。
「見る? 見る? 俺の初めてのお絵かき」
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