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優梨は本当に普通じゃない。もしかすると優梨自身がこれだけ顔がいいから、完璧に綺麗な顔より私のような腑抜けた顔に愛着を持つのかもしれない。
「こんな顔ならきっとメイク落とせばそこら中にいるよ」
「葵じゃなきゃヤダ」
優梨はそう言って私を抱きしめた。本当に何がいいんだか分からない。
そしてやっぱり私を好きだとか愛しているとは言わない。
信じるって何を信じたらいいの?
翌日目が覚めると母と優梨がキッチンで楽しく朝食を作っていた。今日はフルーツパンケーキらしい。
休日の朝、母が機嫌のいいときは必ずパンケーキを焼いてくれていた。今日も機嫌がいいらしい。
「豪華だね」
「そりゃそうよ。優梨君がいるんだから」
家庭的なパンケーキの上にはベリー各種、バナナにキウイ。粉砂糖がかけられ、生クリームが添えられている。チョコレートソースかメープルシロップかはお好みでという感じでそのままテーブルの上に置かれている。
私はそれを食べながら二人の旅行の土産話を聞いた。高級温泉旅館で部屋に露天風呂が付いていたらしい。聞けば聞くほど羨ましくなる。
「葵も来れば良かったのに」
何故か母が鼻高々に言った。
優梨のお金で贅沢したくせに。
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