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「ただいま~疲れた~」
最近の優梨の帰宅時間は私より遅いときがある。仕事の虫だった私も転職を機に自分の中での働き方改革を進めている。
「おかえり。簡単なものだけど夕食作ったよ」
「わ~い。ありがとう」
優梨はソファーに座る私のほっぺにキスをした。平日の夕食はそれぞれのタイミングで食べる。だから今日は優梨がご飯を食べながらソファーに座っている後姿の私に話しかけてくる。
「今日ね、初めて注文貰ったんだ」
「え? 優梨が?」
私は驚いて体ごと優梨の方に向けた。
「うん。ほら前に買ってくれそうなお客さんがいるって言ってたでしょ? 本当に買ってくれた」
「おめでとう! それならもっといい物作ればよかった。乾杯しよう、乾杯」
私はソファーから立ち上がり、冷蔵庫からビールを2本取り出した。入社して間もない優梨が受注できるなんて奇跡としか言いようがない。もちろん先輩社員のサポートのお陰だろうし、その会社の担当は先輩社員なのだから優梨の成績にはならないだろうが、優梨が勧めた商品を買ってくれたというのは本当に凄いことだ。
「まあ、サンプルって感じだけどね」
「それでも凄いよ。乾杯」
私が満面の笑みで乾杯すると優梨の顔が緩み、優しい笑顔になった。
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