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「なんで考えてるの? 普通こんな女面倒じゃない?」
「うん。面倒。面倒だけど葵だから」
私だからなんだのだろうか。私は優梨に何もしていない。優しさに甘えるばかりで、貰ってばかりで、逃げようとするばかりで、こんな女のことを特別に思ってもらう必要なんてない。……ない。ないけど、でも……。
「好き」
優梨の胸にうずくまりながら言った好きはあまりにも小さい声で届いたか不安になる。反応が無さ過ぎて、不安になる。怖くなる。
恐る恐る顔を上げ、優梨の顔を見ると顔を真っ赤にした彼の目に涙が流れていた。
「なんで? なんで泣いてるの?」
「分かんない。初めてだから。葵に言われたの初めてで、驚いて、嬉しくて。え? っていうか今の俺の事だよね? 俺の事好きって言ったんだよね?」
「知らない」
「もう一回言って」
「泣くから言わない」
「泣かないから、ちゃんと俺の顔見て言って」
見つめ合い、沈黙が流れるが、嫌な気分にならない。たった一言でこんなに喜んでもらえる。優梨はずっと前から私の気持ちに気付いているはずなのに、私が言葉にしたからって変わらない事なのに。ああ、そうか。私も優梨に好きって言って欲しかった。
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