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実家に行くのに今日の優梨はスーツを着ている。私はあえて突っ込まずに優梨のネクタイを結んだ。
「葵を幸せにするね」
突然のプロポーズ……のような言葉。素直にプロポーズだと受け止められない自分自身に歯がゆさを感じる。
「ありがとう」
私の精一杯の返事だ。
お迎えの黒塗りの長い車が家の前に止まっていた。こんなことをされるとやっぱり格の違いを感じる。お抱え運転手がドアを開けて待っている。
白い手袋はやっぱりするんだ、と変な事に気を取られる。
「葵からどうぞ」
優梨が私をエスコートした。紳士的な振る舞いに、ああ、本当にいい所の息子なんだ、と思ってしまう。
優梨の家に着くと、家政婦さんに応接間に通された。
応接間には誰もおらず、私と優梨の二人でソファーに座った。
「大丈夫?」
ソワソワする私に優梨がそっと手を重ねた。
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