Ep.12

17/17
前へ
/309ページ
次へ
 優梨に出会えて本当に良かった。優梨の前なら私はダメなところも見せられる。いや、ダメなところしか見せていないかもしれない。こんなソワソワしている私なんて1年前想像もできなかった。  人前で堂々とすること。それが、商談相手としてなめられない最低限の振る舞いだった。いつの間にか普段の行動にも影響し、会社の人の前だと弱い自分は見せられなくなっていた。成績が上がれば上がるほど、昇進すればするほど、元彼にさえ見せられなくなった。  それが、転職し、優梨に出会い、すっぴんを見せることから始まり、いつの間にか素の自分を見せることに慣れていた。何か一つでも違っていれば今の私達はここにいない。  きっとこれが運命なのだろう。  運命を終わらせるも、切り開くも自分次第だ。 「お待たせしました」  優梨のお父さん、お母さん、優醍君がピリピリした空気をまといながら席に着いた。  負けられない戦いが今始まる。
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3607人が本棚に入れています
本棚に追加