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「あの、家柄はどうもなりません。でも、優梨の奥さんとして認められるための努力はします。なんでも言ってください。私は優梨とこの生活を続けたいんです」
「男性を蹴り落して出世してきたあなたに男性を立てる仕事なんてできるかしら」
「母さん」
優梨の声でお母さんは我に返ったように咳をして、話を続けた。
「お家でパーティーすることもありますから、お料理はもちろん、華道、茶道、馬術に社交ダンス、それに――」
優梨のお母さんは思い当たる良家の娘が習得しているありとあらゆることを私に半年で身に着けるようにと言った。馬術や社交ダンスはお母さんの趣味であり、最も得意とするものらしい。私を認めない感がありありと伝わってくる。
「そんなの無理だよ。葵は母さんと違って仕事してるんだよ」
「そんなの仕事を辞めればいいじゃないですか。この家に嫁げばお金の心配なんていりません」
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