Ep.13

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 父でも母でもない。むしろ、二人を反面教師にしたパターンだ。  父はさんざん浮気をして、私達を捨てた挙句に病気になり、最後は母に頼って亡くなった。本当にどうしようもない父だった。  惨めになった父を助けたのはどの浮気相手でもなく、結局は母だった。母は強かった。私はそんなに強くはなれない。本当の意味で男性を信じ愛したことはなかったのだ。でも、優梨は……。 「まあ、葵は真面目で偏屈で、ひねくれものですが、根はいい子です。きっと優梨君の事も心から尊敬し、愛し、頼っているんですよ。そうじゃないとこの子が他人とこんなに長く住めやしませんよ」  母はそう言った。けなしているのか褒めているのか、娘の恋路を邪魔しようとしているのか応援しようとしているのか本当に分からないが、確かに優梨と住んでいても私は私でいられる。疲れてイライラしても優梨を嫌いになることはない。  これまでと違う。  私にとっては優梨が特別なんだ。 「あと、5か月、精一杯頑張りますので宜しくお願い致します」  優梨と別れたくない。この家族に認められたい。そう思うと私はいつの間にか声を出していた。
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