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もちろん、完璧ではない。乗馬も初心者中の初心者だし、ダンスも下手だ。華道も茶道も見様見真似だし、着付けも一人でやるとボロは出る。でも私ができない分お母さんにとっては教え甲斐があり、私はお母さんを心から尊敬できた。
そして、優梨を連れだしたことや一緒に趣味を楽しむことが何よりお母さんの心に響いたのだろう。
完璧じゃないからこそ見つけられる関係性がある。
私と優梨のように。
「それじゃあ、俺らの結婚は認めたってことでいいんだよね?」
優梨は家族にそう尋ねた。
「ええ。お父さんがいいなら」
優梨のお母さんはつんとしながら答えた。
「私は前から認めていたよ」
私達は新年度を迎える前に正式な夫婦として家族に認めてもらえた。
そして、優梨が働いている会社で優梨は奨励賞を貰えることが決まった。大きな商談がまとまったとはいえ、半年も満たない社員が貰う事なんてまずない。大方何かの力が動いたのだろうが、優梨は何故か嬉しそうに「葵も見に来てね」と言った。
あの会社では年度終わりの夕方、全部署で授賞式の映像をリアルタイムで流す。私は何度もその受賞式に呼ばれた。でも観客がいたことなんてなかった。
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