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「私は行っても入れないよ」
「大丈夫。親の力使うから」
優梨が率先して親の力を使うとは、本当に変わった。私は優梨に用意されたブランド物の服に身を包み1年ぶりにあの会社に足を踏み入れた。
社交ダンスを習っているせいか、ガラス扉に映るヒールを履いた立ち姿は自信に満ちた綺麗な女性のようだった。
カツカツと音を立てて歩く度に周りが私に注目する。噂を知っている人はヒソヒソと話しを始める。明らかに嫌な顔をする女性もいる。
1年経っても人々の記憶から私が消えることはなかったようだ。
目の前を歩く優梨が私の手を取ると周りは更にざわついた。
会場に着き、言われた席に座ると授賞式が始まった。
一人ひとり、賞状と金一封が手渡されていく。そして、優梨の名前が呼ばれた。優梨は席を立ち、軽やかに歩いていく。事情を知っている社長から賞状を渡され、優梨はにっこりと笑った。
「少しいいですか?」
優梨は社長のマイクを借りてカメラの前にたった。
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