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卒業式
卒業式
式が終わって女子生徒に囲まれて少し困った顔している蒼真がいる。
眞子が「最後までモテますなぁ八木蒼真!でもまさか医大を目指していたとは……。さっ、行きますか」
「だね……。眞子ごめん、私ちょっと蒼真に言わなきゃならない事があるの」
「えっ、初めてじゃない?八木蒼真に早由利から話しかけるの」
「うん、学校ではね」
蒼真は向かって行く私に気づいて何?と言う顔で回りをかき分け近付いて来た。
その回りからの冷たい視線を感じる。でも二人しかわからない、蒼真にとって最上級の、そして私のありったけの想いを込めた言葉を言う。
「蒼真!私、お母さんに唐揚の作り方教わっておくね」
蒼真はその言葉の意味をわかっている。
そして潤んだ瞳で何度も頷いた。
私は1回だけ大きく頷いてから振り返り。
「眞子、行こうか?」 と歩きだした。
「えっ!あれだけ?」
「そう、あれだけ……」
幸せの涙が溢れない様に、今年も早めに咲いた桜を見上げるふりをした。
やっぱり桜の花って有難い。
ー終わりー
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