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覚えてる?
進路で忙しい秋が通り過ぎ、いつの間にか年も越した。高校3年の3学期なんて殆ど登校する事はなく。早くに看護学校が決まった私は長めの冬休み感覚で過ごしていた。
夕方、コンビニに行こうとコートを着てマフラーで顔の半分まで覆い外に出る。
キーン!と音がする位寒い道を歩いていると向かいから蒼真が歩いて来る。
下を向き背中を丸める様に、目は伏し目がちに…いつもの蒼真じゃない。
「蒼真!どしたの?お腹空いた?」
私はわざと明るく、蒼真の前に跳び跳ねる様に顔を出した。
「あぁさゆか」
明らかに元気がない。私はわざとらしい位明るく。
「肉まんでも食べる?奢ったる!」
「そうだな、腹減ったかな?」
少し笑った。
コンビニで肉まんふたつと、スポーツドリンクかお茶しか飲まない蒼真に温かいお茶、私はミルクティーを買って、近くの小さな公園のベンチに座った。
蒼真が何だかポケットをごそごそしてる。
「はい、さゆ寒がりだからホッカイロ」
「ありがと、ハイ肉まんとお茶」
「サンキュー」
蒼真は手袋を取って受け取り、肉まんを食べながらぼーっと滑り台を見ている。
「蒼真、覚えてる?私滑り台出来なくて蒼真が前に座ってくれて捕まって…」
「あぁ、さゆ怖がりだったもんな」
懐かしげに少し笑ってまた肉まんを口にしている。
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