83人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、蒼真。試験駄目だったの?」
蒼真の顔を覗き込んだ。
「あぁ、甘かったな。ストレートじゃ無理だ、浪人だな!」
「そんなにそこの大学行きたいの?何で…」
そこまで言って私は夏の蒼真の最後の試合の時に甦った言葉を思い出してしまった。
その事を蒼真が話し始めた。
「さゆ、覚えてる?さゆのお婆ちゃんが亡くなった時言った事」
「···················」
私は答えられない。
蒼真が続ける。
「私、人を助けたい。でも勉強頑張れないから看護師になる、そして」
「やめて!覚えてない!」
食べかけの肉まんを蒼真に押し当て逃げる様に家に向かって走った。
その先を聞いたら私にとっての蒼真の存在が変わってしまう。私の中に隠れていた蒼真が現れてしまう……。
部屋に入り窓から、お茶を飲みながら帰って行く蒼真を目で追って呟いた。
「覚えてるよ、私お医者さんと結婚する……だったよね?」
結局、蒼真は浪人する事になった。
最初のコメントを投稿しよう!