失恋した春

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失恋した春

いつもより早くに桜が散った4月の初めだった。 部活が終わってから眞子が私に話があると言うので、駅前のバーガーショップに行った。 「早由利聞いて。私ね翔平と付き合う事になったの」 恥ずかしそうに、でも嬉しそうに私を見た。 「えっ?翔平って野球部の?」 眞子は目を潤ませてにっこり微笑み頷いた。 私がこの高校に入ったのは、野球推薦で翔平がここに入るから、吹部に入ったのは応援演奏で堂々と翔平を応援出来るから。 眞子は高校に入ってからの友達で、元々人見知りの激しい私は友達と言えるのは幼馴染みの蒼真しかいない。なので私の翔平への気持ちなんて誰にも話していない。だから眞子が付き合う事になっても仕方がない事だった。 一生懸命、自分の気持ちを隠し「良かったね」と言うのがやっとだった。 目の前の揚げたてだったポテトは熱を失い元気なく萎んできている。まるで今の自分を見ている様で、これ以上自分を保つのは無理だと思った。 「眞子ごめん、お腹痛くなっちゃったから帰るね」 眞子の「大丈夫?」の声に頷くのが精一杯で店を出た。 幼馴染みの蒼真とは父親同士が親友で、だから小さい時から兄妹の様に一緒にいた。私達が3才の時、蒼真のお母さんが突然いなくなった。それから私のお母さんが母親代わりの様にしていた。蒼真は「さゆママの唐揚げ食いてえ!」とお母さんの作る唐揚げが大好きだった。なのでいつも私の学校行事の時のお弁当は蒼真と同じ唐揚げ弁当。 そんな蒼真が中学の頃から学校一のモテ男でも、私には恋愛対象なんかに見られる筈もなく、野球部の翔平の事をずっと今まで想い続けていた。
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