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約束をした5月
中間試験前の部活停止期間に入った。学校帰り駅の改札を出て前を見るとロータリーの植栽を囲う白いレールに腰かけた蒼真がいた。
「何?また告られんの?」
無表情に淡々と言いながら前を通り過ぎた。
「はっ?んなら学校の近くの駅っしょ?さゆを待ってたの!」
蒼真が私の後を付いて来る。
「用ないし!」
前を向いたまま鬱陶しそうに返すと。
「待てよ!たまには俺の話し聞けよ」
蒼真の手が私の左腕を掴み振り向かせようとした。仕方なく振り向いて無言で蒼真を見上げた。
「さゆ、俺と付き合え!」
「はい?何言っちゃってんの?」
びっくりして大きな声が出た。まじまじと蒼真の顔を見た。
「2度も言わすなよ」
さっきよりトーンが下がった声で私と目を合わさずに言っている。
「嫌だ!蒼真と付き合ったら怖くて学校に行けない!だいたい付き合う意味がわかんない!」
ちょっと喧嘩ごしに言い返すと。
「そう言うと思った。じゃあチャンスくれない?」
今度は顔を上げて含み笑いをして私を見ている。
「何それっ!」
「1ヶ月後、バッティングセンターで20回連続でボールを打ち返したら1回デート。ねっ?これならいいっしょ」
名案だろうと言った誇らしげな顔をして笑っている。
私は観念して
「わかった、1ヶ月後ね。まっ、サッカー部の蒼真が出来るとは思いませんけどね」
「絶対やってやっから!」
その声を背中に聞いて家に向かって歩きだした。
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