6月·約束の日

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バッティングセンターを出るともう日が暮れていた。いつもの道を歩いて帰る。 「さゆ、随分笑ってくれたよな」 「だってあんまりにも凄いコケ方で、みんなに見せてやりたかった。これがあの八木蒼真ですぅ~って」 「はは、そしたら少しは楽になるかな……。でも久々に見たよさゆの本気で笑った顔」 蒼真の顔を見上げると蒼真も私を見ていて目が合った。ちょっとドキッとした自分に驚いたのを隠す様に目を反らすと。 「さゆ、翔平の事ずっと好きだっただろ?」 私の顔を伺う様に覗き込む。 「·············」 「わかってたよ、ずっと……」 「まるで私の事全てわかってますみたいに言わないで!」 「え~っ!だってわかってるじゃん。風呂だって一緒に入ってたし、それにぃ……」 「あ~っ!ぜ~ったい他では言わないでよね!」 「ハイハイ」 と言いながら私の頭に手を乗せた。その手を払い除けながら。 「私わかった!今日の事。私を元気付けようとして1回デートしようとしたんでしょ!失敗したけどね!私だって蒼真の考える事位わかるもん」 「ご自由にお考えください」 蒼真は空を見上げながらどうでもいいみたいな返事をした。 「ねえ、蒼真に聞きたい事がある」 「あれ?俺の事わかってんじゃないの?」 「うるさいっ!ねえ、何で成績上がった?」 「ああ、行きたい大学あるから。サッカーは高校まで、だから今度の大会が最後」 ちょっと寂しげだけどきっぱりと何の迷いもない言い方。 私は驚いた。 「えっ?なんで?」 「前から決めてた事だから……。さゆは看護師だったよな?」 「そう、私は看護師になる」 「そうだよな、言ってたもんな」 蒼真は何かを思い出しているかの様に、また空を見上げながら歩いている。 私の家の前に着いた時。どうせ失敗するだろうと慰めに用意しておいた事を言う。 「じゃあ、最後の試合。お母さんにお弁当作ってって頼んでおくね」 「えっ?やったぁ~!さゆママ唐揚げ食べられるぅ~」 家の前で別れた。ちゃんと将来を自分で決めていた蒼真の背中が街灯に照らされ今までよりちょっと大きく見える。
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